龍の子太郎

龍の子太郎 (子どもの文学傑作選) 
 松谷みよこ作のこの話、私は子供の頃から大好きで、大人になってからも、引越し先にもいつも持っていってたくらいだった。それが長野に来て、この話の元は、地元・上田の民話だったことを知った。若き日の松谷みよこさんが、上田に民話探しに来た際に出会った話に着想を得て書いたものらしい。市内に龍が子を産んだ伝説のある川が本当にある。しかも、その民話の主人公の名は「小泉小太郎」。あら、我がムスコと同じ名前だったとは。しかも、なまけものでぐうたらで寝てばかり小太郎が、一念発起して村を救うという民話が、息子の成長に悩む母の身にはなんだか気持ちよい。
 そんな訳でとっても気になるこの話の劇が市民会館である、と聞いて、高いチケットを奮発して、コタキナ連れて観に行ってきた。人形劇はよく行くけれど、普通の劇は久しぶり。入口には松明が焚かれ、大きなホールにドキドキ感いっぱいで、舞台を楽しんできた。美しい衣装、躍動感溢れる演技でした。舞台装置には少し不満が残ったけど、初めての日本での演劇鑑賞に子供たちも大満足でした。やっぱり生の舞台はいいねえ〜、心の栄養です(←元ダンス部)。
 ところで、大人になって改めて読み返す龍の子太郎、面白かった。登場人物がみんな長野弁喋ってることも新発見やったけど(笑)。米も育たない山あいの村、イワナ3匹食べただけの罪で龍にされちゃう母、生まれて初めて白い米を食べてあまりの美味しさに大泣きする太郎、子供の頃はなんだか想像のできない世界だったけど、大人になって、しかも長野在住の今ならリアルに想像できる。そして母になってから、太郎の母の気持ちになって読むとまた違った感動が。いやあ、面白い話です。民話の持つ、根源的な暗さとか恐ろしさを残しつつ、松谷みよこさんの手で明るく力強くなったこの話、今でもまだ光ってる。