Book club 11・12

Nahoho2006-12-05

 先月のブッククラブはロンドンから戻った翌日にあったので、あまりにも疲れてて何も書けなかったけど、私が翌翌月に読む本のセレクションを持って行く日だった。当然期待されてるのは「日本もの」。かといって、こっちで簡単に手に入る村上春樹吉本ばななはあまりにポピュラーなうえに、私の好みでもない。かといって、私の好きな古典ものは翻訳されてないか、されててもハードカバーしかない、といろいろ悩んだ。
Pale View of Hills 
 で、何が選ばれたかは来月のお楽しみとして、その時持っていった本のうちのひとつを紹介します。イシグロカズオって知ってますか?私は全然知らなかった。彼は日本人ながら幼い頃からイギリスに住んで英語で小説を書き、たくさんの賞ももらっているイギリスでは結構有名な作家です。こっちでイギリス人に彼の小説読んだ?とか聞かれて、誰それ?って答える事が数回あったので、気になってました。
 この「A Pale View of Hills」は彼のデビュー作で日本が舞台。いまはひとりイギリスに住む日本人女性が原爆後の長崎でのある女性との出会いを回想しつつ、イギリスでの現実の話も交錯していくストーリ。とてもよかった!ここ1年ほど、ヨーロッパ小説に食傷気味だった私に、少し古い時代観念でしかも英語で書かれているのにも関わらず、日本らしく静かで言葉少ない美しさをたっぷり出しつつ、緊張感のある文章。内容は結構山アリ谷アリなのに、登場人物の心は驚くほど透明で静かってのが私には気持ちよく、ヨーロッパ人には理解しがたいよう。この本は選ばれなかった。
The Love of a Good Woman: Stories (Vintage International)
 次は、今月のブッククラブの一冊。「The love of a good woman」 by Alice Munro。フランス人のメンバーがセレクトしたカナダ人女性作家による短編集。まとまった時間のとれない子育て中には短編集ぴったり。しかも女性作家で日常描写が多いので読みやすい。
 たぶんフェミニストである著者の書く女性像は、どの話でも何かに抑圧されて苦しんでいるものの、運命を悲観せず受け入れ、そしていつしかどこかで自分の役割を見つけ、強く自分の人生を歩んでいく、というパターン。毎回、殺人や失踪なんかのミステリーも含んでいて、そしてたっぷり余韻を持たせた終わりなので、欲求不満な人も多かったようだけど、私はこういう想像の余地のある終わり方は結構好き。