Book club 9 

Nahoho2006-10-03

”Death comes for the archbishop by Willa Cather”
 ブッククラブは通常7時半から。夏の間はまだ昼間みたいに明るくてドライブも気持ちよかったのが、もう今は真っ暗。冬が近づいてる。
そんな秋のこの一冊。9月はとても忙しかったので今回は諦めようと思ってたけど、最後の土日に驚異の読破!疲れた。
 この本は19世紀後半の開拓時代にフランスからニューメキシコ(今のアメリカ南部)に渡った実在したカトリック伝道師の半生をいた描いたもの。ネイティブアメリカン(インディアン)の住む美しい乾いた大地の描写はほんとに素晴らしいし、馬やワゴンによる旅の様子もすごくワクワクさせられる。サンタフェの渇いた風に吹かれたくなった!が・・・・やっぱり納得いかない!この小説。
 「フロンティア」という名で白人開拓者がアメリカ大陸で行ったインディアン殺戮のことはなんとなくしか知らなかったけど、ちょっと調べただけでもホンマに恐ろしい。土地を手に入れるために空前の数のインディアンが彼らに殺され、故意に病原菌の付いた毛布などを持ち込んで感染させられ、強制的に移住させらた歴史的事実はもう見るも涙。その事実だけ見ると開拓者はケダモノのようにしか見えない。それは開拓時代を語る時に忘れてはいけない事だと思う。
 そしてその後やって来るカトリック伝道師達。100歩譲って彼らはもう少し「よい」人々だとしても、現地民の宗教を無理やり変え、文化を奪い、最終的には彼らの教区内に住むインディアンの破滅の一旦を彼らも担ってることは明らかなのに、彼らには反省の色が全くない!!最後までない!最後にはその土地にキリスト教の大聖堂まで建てちゃう!いやもちろんその時代のキリスト教の思想やから自分達の伝道行為は正しいと心から思ってて反省する訳もないんやけど、小説的にはもうちょっと苦悩したりしてほしかったなー。ほんとにあっけらかんと、自分たちを善だと思ってる登場人物像とその描写で終わるこの小説。インディアンの悲しみに真摯に触れる部分はほろんど見つけられない。その時代の「白人(キリスト教)の優等思想」ってのはここまで、徹底的だったんやなあ、と。伝道師達が純粋な人達やから余計に怖い。
 もちろんこの小説のテーマはインディアンの歴史ではないから筋違いのつっこみかもしれへんけど、いくら他の伝道師との美しい友情やインディアン文化への一抹の憧憬を書かれても、一貫してこの本のなかに流れ続ける「優れた人間である白人キリスト教伝道師」が「無知で哀れな人々」を「救ってあげる」ために命を捧げた一生っていうテーマがもうかゆいー!出版されたのが1892年とかなり昔なので、もちろんその時代の思想を表しているってことは承知やけど、それにしても今もそのまま名作としてヨーロッパで読まれてる事実ってどうよ?と思ってしまう。いやそのままだからこそ、現代人にはこうして歴史について考えるきっかけを与えてくれる名作であるとも言えるのかな。
 片方だけから書かれた歴史というのはほんとに恐ろしいと思うこの頃。人間関係もそうやけど。
Death Comes For The Archbishop (Virago Modern Classics)